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二十年前、サラリーマン時代、まだ二十代の頃。
その日あした秋葉原にオーディオでも買いに行こうかと財布には福沢諭吉が20人ほど入っていた。それで気持ちが大きくなっていたのだろう。金曜日だったことも手伝って、後輩社員たちを連れてお寿司屋さんに行ってしまった。
好きなもん頼めよと言うのもなんだから、「大皿に半分とろ半分うにを握って、それを二皿。あとアサヒ10本持ってきて」と注文した。諭吉5、6人ぶんぐらいだろうか。
ビールを飲みながらワクワクして待っていると、座敷のテーブルに、半分とろ半分うにの大皿が二皿運ばれてきた。
半分が美しい朱色、もう半分が鮮やかな蜜柑色、それが二皿。
「うおおおーーー!!!」
みんなで歓声をあげた。味もさることながら、見た目も強烈な晩ごはんだった。もちろん大盛り上がりで、一気に食べてしまった。
店を出たとき、諭吉13人が財布から消えていた。
今だにあの強烈な晩ごはんを一緒に食べた仲間には、「あんとき吉岡さんの目ェ泳いでたのおもろかったなあ。吉岡さん無口になって、二次会行かないでスーッと帰っちゃいましたもんねえ」そう思い出話しのネタにされている。