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生命史の本によると、ダーウィンの云う『もっとも強い者が生き残ったわけではない。生き残ることができたのは、変化できた者である』は、少々言葉足らずのようだ。
精確には、『もっとも強い者が、つまりナンバー1が、生き残る。そして生き残る者は、ナンバー1になれるオンリー1の場所を持っている』のだと云う。
このナンバー1になれるオンリー1の場所を、生物学では「ニッチ」と呼ぶ。 「ニッチ」とはマーケティング用語ではなく、もともと生物学用語なのだ。
ナンバー1であるために常に競争にさらされているようでは、疲弊してしまって、この世に存在し続けることはできない。だから生き物たちは、ナンバー1になれるオンリー1の場所が重ならないように、「ニッチ」をずらしながら自分の居場所を確保している。
たとえば、シマウマはサバンナで草を食べるという「ニッチ」を持っていて、キリンはサバンナで木の葉を食べるという「ニッチ」を持っているという具合にだ。
ひとつの「ニッチ」は、ひとつの生き物でしか占めることができない。それはまるで、イス取りゲームだ。
しかし、このイス取りゲームに新たなイスが置かれる時がある。それは、変化の時だ。
変化の時こそが、埋め尽くされた「ニッチ」に、手つかずの新たな「ニッチ」を生み出す最大のチャンスなのだ。
白亜紀の終わりごろ、地球上にひとつしかなかった大陸が分裂し、移動を始め、地球は地殻や気候が変動する「変化の時代」に移行した。
何が起こるかわからない「変化の時代」になれば、植物は「木」のように時間をかけてゆっくりと大きく育っている余裕がなくなる。
そこで、「木」よりも短い期間に成長して花を咲かせ、いち早く種子を残して世代更新していく「草」が登場した。
この「変化の時代」に、植物は、「木」から「草」へと変化、進化したのである。
シマウマがサバンナで「草」を食べるという「ニッチ」は、「木」が「草」に変化、進化したから生まれた「ニッチ」なのだ。変化が新たな環境を生み出し、新たな「ニッチ」が生まれたのである。
また、ただやみくもに変化しているだけでは生き残ることはできない。生命史には、変化しないということが最高の進化である場合があるからだ。
たとえばシーラカンスやサメやカブトガニは、何億年もの間、ほとんど進化することもなく、昔のままの姿で生きている。
変化する必要がなければ、変化しなくて良いのである。
切削工具の販売と物販、工作機械の販売と物販、伝導機器の販売と物販、物販と工事・メンテナンスを得意とする商社はごまんとある。
私たちはそれらのような商社とは少し違う。
私たちは切削工具の販売と工事・メンテナンスで顧客にお役立ちしていくという「ニッチ」を持っている。私たちの「ニッチ」は、他社とは少々ずれているのである。
そして、私たちが変化させなくて良いものとは、理念と感性をベースに経営をしていることだ。
私たちはニッチ、つまり、ナンバー1になれるオンリー1の場所を持ち、変化しなくて良いものまで持っているのだ。