入社したころ、私たちの会社はひどかった。
財務面で言うと、借金13億、不良在庫8,000万、未回収金3億、という有り様だった。
人財面で言うと、部下の仕事に全く興味のない役職者たち、一生いちセールスのまま役職や給料だけアップさせたいと切に願う営業幹部たち、朝礼中に寝る者や出勤日に打ちっぱなしに興ずる者たち、不正や横領に血道をあげる者たち、そんな有り様だった。
強烈なリーダーシップで、世直しよろしく会社を建て直す以外、方法はなかった。
たとえるなら、軍服を着こみ、愚かな意見には一切耳を傾けず、毒に対しては強烈な解毒剤を用いて排除する以外、方法はなかった。

しかし、今、私たちの会社にはそのような事象はない。私たちは変わったのだ。

今、私たちにあるのは、どこの会社にでもある事象ばかりだ。
だから、今、私はあの頃着ていた軍服を脱ぎ、あえて持たなかった聴く耳を持たなければならない。
また再び、あの頃のようになってしまうことを畏れていてはならない。
お互いを敬うことで成長していけるメンバーになったことを信じているからだ。