マネジメントメッセージ

マネジメント・メッセージ 2016年9月

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脳はだまされやすい。
どれだけ脳がだまされやすいかというと、たとえば疲れている時、気合いを入れるだけで元気になったりするぐらい脳はだまされやすい。眠たい朝でも、朝礼で、理念を唱和したりするだけでピリッとするぐらい脳はだまされやすい。
なぜだまされやすいのかというと、脳はひとつの感情しか認識しないからだ。面倒臭いなと思っているような時でも、早足でテキパキ動いていると気持ちが乗ってくるのも、脳がひとつの感情しか認識しないことが理由だ。悲しい時でも、楽しいことを感じれば、その瞬間は悲しみを忘れていられるのもそうだ。脳とはそれぐらい単純でアバウトなだまされやすい器官なのだ。

中高生の時、試験期間中、「なにだらだらしてんの? 勉強しなきゃダメなんじゃないの?」というようなことを親に言われて、それが勉強していない時でも頭のなかで鳴り響いて、試験期間中ずっと気持ちが休まらずに、勉強していないにも関わらず勉強しすぎたぐらいの疲れを覚えたりしたことはないだろうか。
親に勉強しなさい的なことを言われるぐらいなのだから、実際こういうひとは勉強していない。勉強していないから成績も悪い。成果も出ない。こんなとき、だまされやすい脳は、こんなふうに認識する。
《こんなに疲れるぐらい勉強を頑張ったのに成果が出なかったのだから、わたしは勉強が苦手なんだ》
勉強していないから成果が出なかっただけなのに、このひとの脳は、勉強が苦手だから成果が出ないと認識してしまうのだ。自信を失ってしまうのだ。
このようなかたちで脳がだまされるのは、幸福ではない。疲れるぐらい頑張ったのに成果が出ないひとは、人生も仕事も面白くないだろう。実際は、疲れるぐらい頑張ったと脳がだまされて思いこんでいるだけなのだが……、やっていないから成果が出ていないだけなのだが……。

ところで、私たちビジネスマンはアスリートではない。
私たちビジネスマンは、オリンピックでメダルを取れずに7位に終わってマスコミに、「どうしたんだ? たるんでたんじゃないのか?」なんてことを言われるアスリートではない。もし私たちビジネスマンが世界で7位なら、とてつもないビリオネアのはずだ。
なにが言いたいのかというと、私たちビジネスマンは、アスリートと比べて、そんなに激烈なことをしている訳ではないということだ。私たちビジネスマンが、計画を立て、それを日々行動に移し、穏やかな努力をしていれば、成果は必ず現れる。元々100メートルを10秒08で走れるひと、それだけでも既にすごいひとが、9秒台を出そうとする激烈な努力に比べれば、私たちビジネスマンがする努力など、ほんとうに穏やかなものだ。私たちがする努力とは、計画を立て、それを日々行動に移していれば、必ず成果となって現れる類いの穏やかなものなのだ。

だから、私たちビジネスマンにとって成果を出すために重要なこととは、計画を立て、それを日々行動に移し、穏やかな努力をしていくことだ。それにさえ素直に取り組んでいれば必ず成果は出る。つまり、私たちビジネスマンが成果を出すために必要なこととは、〈素直さ〉と〈行動力〉なのだ。
それでは〈素直さ〉と〈行動力〉がないと、どうなるか。
〈素直さ〉のない彼は、まず計画を立てないだろう。素直に計画を立てないから、彼はついついやるべきことを忘れてしまう。忘れてしまうから、彼はやるべきことを行動に移さない。そして、何度も周りから、注意や指導を受ける。
そこで前述した、中高生の時、試験期間中、「なにだらだらしてんの? 勉強しなきゃダメなんじゃないの?」というようなことを親に言われて、それが勉強していない時でも頭のなかで鳴り響いて、試験期間中ずっと気持ちが休まらずに、勉強していないにも関わらず勉強しすぎたぐらいの疲れを覚えてはいるが、勉強していないから成果が出ないという話に戻る。
彼は、素直に計画を立てないからついついやり忘れる。やらないから成果も出ない。彼は、何度も周りから注意や指導を受け、実際はやってもいないのにやったぐらい疲れている。でも、やってないから成果が出ない。そして、彼の脳はこんなふうに認識してしまう。
《こんなに疲れるぐらい仕事を頑張ったのに成果が出なかったのだから、わたしはこの仕事が苦手なんだ。不向きなんだ》
仕事をしていないから成果が出なかっただけなのに、彼の脳は、仕事が苦手だから成果が出ないと認識してしまう。彼は自信を失ってしまう。

私たちビジネスマンが成果を出すために必要な〈素直さ〉や〈行動力〉、この〈素直さ〉や〈行動力〉がなければ、成果はもちろん自信まで失ってしまうということが、以上の説明でよく分かったと思う。そして、私たちビジネスマンにとって成果を出すために重要なことが、素直に計画を立て、それを日々行動に移し、穏やかな努力をしていくことだということもお分かりいただけたと思う。
であれば、上司が上司として機能するには、まず部下が素直に計画を立てているかを目で見てあげることだ。その進捗をよく検証してあげることだ。つまり、部下の穏やかな努力に寄り添ってあげることだ。上司がこれを素直に行動に移していれば、上司は上司として機能していると言える。私たち上司は、落伍者を出さないために、このことを素直にお腹に落とし込み、日々行動に移していく。